つくらない店づくり

デザインのアイデア

金沢にオープンした「さぶろうべい尾山町店」今まで数軒お手伝いさせて頂いたお店になります。
今回は今までと少し違った立地条件となり、ターゲットになる客層も異なるので、新しい「さぶろうべいらしさ」を表現する必要があると感じました。

さぶろうべいは、昭和25年に高橋三郎平さんが「限られた食材を余すことなく使用した料理で、寒さに震える人々を暖かくしたい」という思いをもって、自ら建てた小屋でスタートされました。
こういった「思い」や「ストーリー」を表現する事が、新しい「さぶろうべいらしさ」になるのでは、、、と思いました。

「素朴」であり、優しさや親しみやすさがある。
そして「小屋」をつくるのではなく、あくまで雰囲気として感じてもらえる。

そういったお店を目指してスタートしました。

物件契約時の1階の状態|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

元は50年ほど経過した 2階建ての古い長屋の建物ですが、外観も内装もリニューアルされた物件でした。
物件契約時は全面石膏ボード貼りになっていて、「あとは壁紙を貼ったり塗装したりすればお店になりますよ」というような状態でした。

さぶろうべい尾山町店の1階の現地調査の様子|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ


まずは現地調査。
部分的に石膏ボードを外してもらい、壁や天井の中を調べていきます。
1階は全て木で組まれていますが、柱は新しいものに入れ替えてるようでした。(ただ、化粧柱ではなく 見えない所に使う節だらけの柱ですが)そして、建物全体がかなりゆがんでいました。

古い味わいのある柱が出てくるだろう、と予想していたので、あれ?という感じでした。
でも、色んな角度から考えているうちに、この感じを広げていけば、何か新しい「らしさ」に繋がるような気がしました。
「未完成」がひとつの魅力となるような、そんな感じが今回のテーマに結びつくと。。。

さぶろうべい尾山町店の1階の解体工事後の様子|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

使わないものを一旦外し、足りないものは、素材感や空気感を合わせながら足していく。
「つくる」というより、「整える」「合わせる」という感覚が近い。
建物が持っていた魅力を引き出し、少し手を加えていくような、そんな感覚で計画を進めました。

基本的には、デザインと図面を作成して、全ての条件をクリアしてから工事が始まります。
毎回かなり綿密にデザイン計画をたてますが、実際の工事では、図面通りにいかないこともたくさんあります。
今回はこの「思い通りにいかない事」も取り入れたい、と思っていました。

工事完成まであと少し|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

「ここはこうしたい」という場所と、「ここはお任せしたい」と委ねる場所。
その選択を判断するのは難しいけれど、職人さんや監督さんが、こちらの思いやニュアンスを汲み取りながら進めてくれたことは、とてもありがたかったです。

工事も終盤。
まだまだできていないように見えますが、実はこれでもうほぼ完成です。
あとは家具と厨房機器を入れるだけ。

家具や厨房機器を入れると、一気にお店らしくなりました。

計算されたモノと、されていないモノ。
この2つが混ざりあって、今回のデザインは成り立っています。

さぶろうべい尾山町の完成した1階の店内|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ
物件契約時の2階の状態|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

2階も同じく、あとは仕上げて家具を置くだけ、のような状態でした。

壁や天井の内部の様子|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

なぜか2階の壁の中は、古い柱が残っていましたが、軽鉄という金属下地で組まれていました。
天井の中がとても高く、大きな曲がり梁もありました。
素材も色もとにかくバラバラ。
一番奥の壁面に土壁っぽいものが見えるけど、どうなっているのかよく分からない。

構造材やファサードの壁面、一部の屋根も含めてリフォームしているので、構造材を残して解体しても、古い長屋の建物が残るわけではなく、新しい素材と古い素材が入り乱れた雑然とした見た目になってしまう。
今回は、そのバラバラ感も利用して、「このお店の特徴のひとつ」として表現する事にしました。

さぶろうべい尾山町店の今にも朽ち果てそうな古い壁面|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

解体工事が終わると、
一番奥のよく分からなかった壁の中から、リフォーム前の古い土壁や扉が出てきました。
雰囲気はあるけど、素材も色も高さもバラバラな上に、かなりボロボロで穴だらけ。

すごく良い雰囲気に見えたので、できる限りそのままお店の壁として使いたいと思い、残してもらう事にしました。

土壁の補修|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

ただ、そのままでは使えないので、穴の塞ぎ方や補修方法を工事サイドで検討してもらいました。

穴の空いた壁は、竹と糸で編み込み、上から土壁を塗っていきます。
元の”わらスサ”の土壁なども、ボロボロと落ちないように透明のコーティングをしながら残してもらいました。
板壁も土壁も、補修箇所が独特の模様となり、思っていた以上の良い雰囲気になりました。

さぶろうべい尾山町店の柱や階段に残る古い記憶|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

柱にあった、昔住んでた子供の成長の記録。
古い梁に刻まれた溝や色合い。
普段目につくことはありませんが、こういったものもたくさんあり、このお店の雰囲気をつくるモノの一つとなっています。

2階は古さが少し勝ち気味ながら、新しいモノと古いモノが混ざり合った、独特な雰囲気になりました。

さぶろうべい尾山町店の完成した2階の客席|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ
物件契約時のお店のファサード|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

外観は、和の雰囲気がなく、なべ料理のお店としては使いにくいファサードでした。
和の雰囲気を出すには、外装に木材を使ったりと、たくさん変更しないと変わらないような、、、

でも、色々案を練った結果、一部の外壁を外すだけにしました。

さぶろうべい尾山町店の完成したファサード|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

ガラス越しに店内を見せるだけで、和と木の感じが外にも出ました。
ファサードは、つくるというより、開いて中の様子を見せる、という感じです。

看板には、虫食いやシミ、釘などが残った古木をそのまま使い、文字を手彫りで入れてもらいました。
整ってはいないけれど、さぶろうべいの空気感に合った「らしさ」のあるサインになったと思います。

工事が完了したさぶろうべい尾山町店のエントランス|つくらない店づくり-PARKDESIGNのブログ

「つくらない店づくり」というのは、言葉にすると少し矛盾しているかもしれません。

新しくつくることだけが「店をつくる」という事ではないような気がします。
その場にあるものをどう活かすかで、いろいろな表現ができると思っています。
例えばこれが、コンクリートの建物やタイル貼りの建物だったりすると、また全然違った「らしさ」になっていたはずです。
与えられた素材や環境に向き合い、そこにあるものを活かすこと。
それもまた、私たちが大切にしているデザインの考え方です。

新しいのに、どこか懐かしい。
完成しているようで、どこか未完成なまま。
たくさんの人の手と感覚が重なってできたお店です。
そんな「さぶろうべい尾山町店」の空気感を、とり白菜なべと一緒に味わっていただけると嬉しいです。

こちらのページでは、お店の詳しい写真をたくさん紹介しています。
「さぶろうべい尾山町店」

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